最も未来に近い水族館『すみだ水族館』室内でも楽しめる展示空間の魅力

これまでの記事を見返してみると、京都水族館でも須磨海浜水族園でもペンギンの展示空間があまり魅力的ではないと書いていました。
そこで今回はペンギンの展示空間が面白い水族館を1つ紹介します。(私個人の意見です)

今回紹介するのはすみだ水族館です。
ペンギンの展示空間以外にも魅力がたくさんあるので、それも含めて伝えられたらいいなと思います。
※2020年11月に各種情報を更新しています。

「すみだ水族館」と「京都水族館」の共通点

すみだ水族館は東京スカイツリータウン・ソラマチの中にあり、駅直結型の水族館です。5Fと6Fを3つのスロープで繋げた小さな水族館です。
2012年に開館し、管理運営はオリックス不動産、設計・施工は大成建設です。これは京都水族館と同じです。そのため、館内マップなどからも似た雰囲気を感じます。

すみだ水族館のメインはやっぱりペンギン!

すみだ水族館はペンギン、京都水族館はオオサンショウウオをメインに押し出しているのがわかります。どちらのデザインも可愛らしいですね。
新しい私立水族館ならではの「今っぽさ」を感じます。(写真は私の部屋の壁です)
入館料は大人2300円で、開館時間は平日10時〜20時、休祝日9時~21時。駅からのアクセスも良いので仕事帰りにふらっと訪れたり、デートプランに入れたりしやすいですね。時期にもよりますが、一般的に水族館は17時〜19時には閉館します。
21時までやっている水族館があるなんて、それだけで東京に住みたくなります。

室内だけで水族館の楽しさを完結させるための「動線計画」

こちらはフロアマップです。すみだ水族館はスカイツリータウンの5Fと6Fに位置しています。それらが2つの階段と2つのエレベーター、そして2つのスロープで繋がっています。

チケットを購入したらまず階段を登ります。
「何が始まるんだろう」
「何が見れるんだろう」
「楽しみだね」
こういう会話をしながら私たちの期待は高まります。
この階段は私たちが『違う世界』へ行く準備を自然とさせてくれているのです。

充実した展示空間を実現させるスロープの使い方

動線計画で特に私が素晴らしいと感じたのはスロープの使い方です。

まずは5番(館内マップ参照)のペンギンのコーナーにあるスロープ(写真は2018年3月にいった時のものです)。
私たちは大きなペンギンの水槽の周りを一周しながら5Fへ降りて行きます。左手にはペンギン・右手には金魚やオットセイの水槽があり、広いスロープのどこにいても立ち止まる要素がたくさんあります。
「水槽の周りに人が多くて見たい生き物が見れなかった、見れる位置まで行くのに時間がかかった」という経験はありませんか。私はあります。
しかし、このスロープは、その問題を見事に解決しているのです。車椅子でもゆっくり降りることができる長い動線を確保しつつ、立ち止まる人を分散させています。曲線も美しいですね。さらに、スロープによって左と右で5Fの空間を分けているため、必然的に私たちはより長い距離を歩くことになります。そして空間(水槽展示)のバリエーションを増やし私たちにより多くの体験をさせることで狭さを感じさせない豊かな室内型の水族館となっています。

オットセイの展示方法に注目!

すみだ水族館ではペンギンが注目されがちですが、私はオットセイが大好きなので、オットセイの展示方法を推しておきます。すごいです。(もちろん人気者のペンギンについても後で推します)

スロープから見えるオットセイはこんな感じです。
照明が幻想的なところと、オットセイ自体の姿が見えやすいところ。この2つのエリアが繋がっていてオットセイはそれらを行き来します。

上からでも楽しめますが、スロープを降りるとさらに横からと下からの見方ができるのです。

はい、かわいい。一度で二度、三度と味わえる。オットセイ好きにはたまりません。ミナミアメリカオットセイの丸くて愛らしい目が、泳ぐときには気持ち良さそうな細い目に変わるのが好きで、ずっとみていると何か神秘的なものさえ感じてきます。

ちなみに大水槽の空間の使い方、作り方は京都水族館と良く似ていました。
5Fでも6Fでも楽しめます。

この時は運よくエイが魚を食べる瞬間をみることができました。
大水槽っていつまでもぼーっとみていられませんか。青くて深い、海の中にいるような気分になりますね。椅子に座ってしばらく眺めるのが好きです。

「万華鏡トンネル」と美術館のような芸術的な展示エリア

また、スロープはもう1つあります。
すみだ水族館では、降りてきたお客さんをもう一度6Fに上がらせるための万華鏡トンネルがあります(館内マップでいうと4の後ろ)。

万華鏡って素敵な表現ですよね。とても綺麗でした。
6Fの床がないことで天井高が高くなり、空間を広く感じさせます。そして、高さを生かした水族館とは思えない照明や鏡の使い方。こんなところは他の水族館にはありません。しかも、この照明や映像や展示、時期によって変わるのです。
上の写真は2018年9月、下の写真は今年3月のものです。

企画展で、水木しげるさんや蜷川実花さんともコラボしたことのある展示エリアです。
水槽がアート作品に見えてきます。まるで現代的な美術館のようですね。

こうしてもう一度上に上がらせることでペンギンに夢中で一巡目では気がづかなかった他の水槽をゆっくりみることができたり、新しい発見ができたりします。

すみだ水族館には外部空間もイルカショーもありません。これは水族館を設計する上で重大なデメリットです。しかし、歩く距離を長くし、体験型の展示空間にすることで室内空間が豊かになり、大きな満足感を得られます。むしろ外部空間がないことで私たちは一貫して大人の水族館のような雰囲気を感じ、異世界にいる気分に浸れるのではないでしょうか。

墨田区ならではの取り入れられた江戸文化

東京都内には、アクアパーク品川やサンシャイン水族館を初めとする水族館がいくつもあります。まさに水族館激戦区です。
そんなすみだ水族館が他の水族館との差別化を図るための作戦として大きな特徴が1つあります。

すみだ水族館の目玉でもある「金魚」の展示

すみだ水族館と聞いて、思い浮かぶ美しい光景。そう、『金魚』です。

金魚は江戸文化を語る上で欠かせない文化の1つ。すみだ水族館ではそんな金魚文化を学ぶことができます。

金魚はなぜ生まれて、どのように広まっていったのでしょうか。
学校では教えてくれないことを、すみだ水族館で知り、考えることができます。

江戸時代にはサイドビジネスとして金魚売りが広まったそうです。この手押し車も江戸時代をイメージして作られたのでしょうか。面白いですね。

細かなこだわり!水槽の模様にも注目

そして、江戸文化は水槽でも表現されています。

この模様です。模様の名前はわかりませんが、江戸時代に使われていた模様なのかなあと思いました。違っていたらすみません(知識がなくて申し訳ない)。

そういえば東京には私の大好きな親戚が住んでいるのですが、その親戚は着物屋さんでした。次行くときはその親戚と一緒に行って聞いてみたいです。

現在すみだ水族館では推しペン総選挙というものが行われているみたいですが、私が行った時(9月)は東京金魚番付が行われていました。

良いイベントですね。一緒に行った人と「どれが好き?」なんて会話しながら金魚を楽しむことができます。

ちなみに私はイエローコメットという金魚が一番好きでした。
動くのが早くて撮るのが難しいですが、鮮やかな色と美しい尾ひれに惹かれました。

ペンギンやオットセイの楽しそうな姿と「それを実現させる技術力の高さ」

ショー中以外でも生き生きしているペンギンが見られる水族館はそうありません。
野生のペンギンは餌を取るために泳ぎます。生きのびるために泳ぐのです。しかし、水族館では餌は飼育員から与えられます。つまり、わざわざ泳いで体力を消費するようなことはしなくなってしまうのです。(多分)
例えば京都水族館では、餌やりタイムという名のショーの時間にしかペンギンは泳ぎません。(陸地部分が多いというのもあるのでしょうが)

それがどうでしょう。すみだ水族館ではペンギンが気持ち良さそうに泳いでいるのです。
ペンギンが思わず潜りたくなるような、これだけの深い水槽を作れるのは大成建設ならでは。技術力の高さ、圧巻です。

この厚いアクリルってすごいと思いませんか。透明度を保ちながら水槽としての構造的耐久性を生み出す。世紀の大発明レベルではないでしょうか。どうやってこのように美しく施工したのか、気になります。(マニアック)

6Fやスロープでは岩場のペンギンやプカプカと浮いているペンギン、5Fでは水中を泳ぐペンギンを近くで観察することができます。

ペンギンに限りませんが、水族館ではよくアフレコして楽しみます。
「飛び込もうかなあ、怖いなあ、いやでもやっぱり泳ぎたいな」「もたもたするな、俺は行く!」「と見せかけていかなーい」なんて風にペンギンが言ってそうなことを想像してみるのも面白いですよ。

こんなに間近で見られる!可愛すぎるオットセイ

オットセイも負けていません。(もう一度推させてください)
なんと、館内をオットセイが歩き回るのです。

走ったり、

立ち止まったり

餌を食べるところまで!

この写真、拡大して撮っていません。こんなに間近でオットセイをみることができるのです。嬉しいサプライズでした。オットセイってツルツルしてそうですが、意外と毛がフサフサなんですよね。カーペットのような触り心地なんでしょうか。気になりますね。

狭い室内空間でも充分に楽しめるワケ「生き物展示の工夫」

すみだ水族館は小さいため、展示されている生き物の種類はそんなに多くありません。
しかし、クラゲやチンアナゴやペンギンなどの人気の生き物を魅力的に展示することで、充実した展示内容となっています。

クラゲは展示されている種類が豊富なだけでなく、展示方法も特徴的です。
背景に映像を使用しているのです。どれがクラゲだかわからなくなってきますね。
幻想的な空間をさらに幻想的にしています。

すみだ水族館は世界初の快挙を成し遂げていた!

また、アクアラボでは、実際に白衣を着たスタッフが研究している様子をみることができます。顕微鏡とかもあって、なんとなく近未来感がありますね。水族館のバックヤードをあえて見せるというのは面白い発想です。

また、チンアナゴの水槽がとても大きく、チンアナゴ・ニシキアナゴ・ホワイトスポテッドガーデンイールがたくさんいます。絡まりそうなニシキアナゴも見ることができて大満足です。

また、すみだ水族館は世界で初めてチンアナゴの産卵の瞬間を撮影したことで有名です。こんなに新しい水族館で世界初の快挙が成し遂げられたのです。素晴らしいですね。確かに、チンアナゴがどうやって繁殖しているのか気になります。(Youtubeでみることができるので、気になった方は探してみてください)

多様なコラボレーションを実現する「圧倒的な挑戦力」

これもすみだ水族館の大きな武器です。私が行った時にはすみだ水族館と映画「未来のミライ」がコラボしていました。

きっと水族館の企画段階でこのように多様なコラボまで考えていたのだろうな、と思います。映像と照明を変化させることや、水槽をずらしたりすることまで含めて設計しているのでしょう。そのおかげでこのように様々なアーティストや映画までもとコラボできるのでしょう。
ちなみにエントランスすぐの階段付近には素敵な映像が流れていました。

私はすみだ水族館に行く前にこの映画をみにいきました。映画の中で登場してくる建築物が谷尻誠さんという有名な方の設計で、建築学生としても楽しんで観ることができました。すみだ水族館では映画のことを思い出しながらより企画展を楽しむことができました。

最初の自然水景のエリアでは、映画のシーンを再現した水槽がとても綺麗でした。
まるで映像をみているかのようでした。

このデザインはアクアデザインアマノ(鑑賞魚業界の一流企業)です。こういう一定期間のための展示にも関わらず、気合いの入れようがすごいです。


絵コンテや写真スポットまで用意されていて、企画展とは思えないクオリティの高さでした。
東京だから、すみだ水族館だから、オリックスだからできるコラボではないでしょうか。オリックスの経済力も感じます。

コラボだけでなく、季節感のあるイベントやフードメニューからも、挑戦力を感じました。
新しいことにどんどん挑戦していく水族館にはワクワクするし、また行きたいなあと感じます。

すみだ水族館はきっとリピーターも多いのではないでしょうか。
もし私が東京に住むことがあれば、必ずすみだ水族館の年パスを買うだろうなあと思います。

「京都水族館」の基本情報(所在地、営業時間、入館料)

京都水族館
所在地:〒600-8835 京都府京都市下京区観喜寺町35−1
営業時間:平日 10時~20時
休祝日 9時~21時
休館日:なし(年中無休)
入館料:【大人】2,300円
【高校生】1,700円
【中・小学生】1,100円
【幼児(3歳以上)】 700円
2020年11月現在、WEBでの事前予約が必要です。
予約方法などについてはこちらから。

まとめ

すみだ水族館はどこの水族館よりも近未来的な、新しい水族館です。季節や時代に合わせて変わっていくことまで考えて、持続可能な水族館を企画・設計したオリックスや大成建設の偉大さに感動しました。
新しい水族館を提案することで水族館業界は発展していきます。アートアクアリウムのように、生き物をアート作品のように展示する手法は現在とても人気です。
アート作品としての水槽。すみだ水族館はそういう新しい水族館の在り方を提案しています。
時代のニーズに合わせた「美術館のような水族館」はとても興味深く他とは違う楽しさがありました。
すみだ水族館は水族館業界の新しい歴史を作ってくれたといえるでしょう。
東京都外からでも訪れる価値は十分にある水族館だと思います。ぜひ、行ってみてください。

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